T-1100S修理 〜Prologue〜

2006.4.30


1, T-1100S入手に到るまで

正直言って、カセットテープがこれ程衰退するとは思っていませんでした。
正直言って、衰退した後もカセットテープを使うなんて思っていませんでした。
MDが出てきて、周りの人たちはMDに乗り換えていく中でもカセットテープを使い続けていました。そしてMDも衰退し始めて、iPodが席巻した後も、カセットテープを使い続けようとしましたが、肝心のデッキがダメでした。

ステレオ(単品コンポ)を貰い、半分以上壊れていたコンポシステム Panasonic SC-D5を片付けましたが、その時既に以前うちにあった、私の心の中で、最高級品だと思っていたWリバースカセットデッキ(RS-TR555)はギヤの欠けか何かで、引き取られて行った後でした(今は元気に動いてるらしいです)。その代わりに来たのが、RS-B22W。このデッキは普通に使えるかな、と思いましたが、録音すると何か音が細り、しかも時々テープを噛む、という症状が出ていたのでカセットデッキは事実上殆ど使わない、という時期が1年以上続いていました。

そんな状態だったので、何とか使えるカセットデッキを手に入れないと、と思い情報を集め始めました。駅前のヨドバシに行ったりもしました。
TEACとPioneerとSonyしかない!Panasonic(Technics)は???
と心の中で叫びました。

私の(というか、うちにある家電)は殆ど松下電器製、松下製を見て育ってきたので他のメーカーの物なんぞ眼中にありませんでした。TechnicsのデッキはHPにはまだ載っていました。

暫くすると単品コンポブランド、TechnicsのHPからごっそり、それこそ、カセットデッキどころか、アンプからCDプレーヤーから、全て単品コンポがなくなっていました。DJ用のターンテーブルのみです。

終わった……

暫くガックリしていましたが、それならばRS-TR555をもう一度手に入れよう。そう思ってネットで探し始めました。因みにまだこの時はNV-FS70探しの時と同じパターンで、RS-TR555という型番はわかっていない状態でした。でも、それが良かったのかもしれません。
あるオーディオ系HPに行って、まず最初に知ったのは、かつてウチにあったデッキはRS-TR555という型番で、値段は決して高いものでは無かった、という事実でした。更に驚きなのは、Wリバースよりもシングルデッキの方がいいものが多い事。それを知ってから価値観がガラット変わりました。そこで色々な知識を得て、3ヘッドのデッキを探すようになったのです。

そこで目を付けたのがRS-AZ7。Technicsの技術の結晶で出来たデッキ。ビデオデッキを色々見る事で知った、アナログ機器の品質に関わる"重量"はRS-TR555より重い。更に、他に紹介されているデッキに比べて遥かに新しく部品もまだ手に入る筈。そう思ったのでRS-AZ7にターゲットを絞る事にしたのです。

それから色々あり、2006年1月時点でのターゲットは3機種に絞られていました。

1, TASCAM 122mk3 (新品)
2, Pioneer T-D7 (新品)
3, Technics RS-AZ7 (中古)

1, は通販で、2, はヨドバシで、そして3, はユニオンで買おうと思いました。ここで問題が起きました。

1, 122mk3→生産終了
2, T-D7→D7買うなら、T-770Sやその上位機種のT-1100Sを買った方が遥かにいい、という情報入手
3, RS-AZ7→扱う価値が無い為取り扱っていない、と言われる。

そこで、とりあえず3ヘッドの新しすぎず古すぎず、という機種を探す事にしました。いつも寄ってるハードオフに行ってみると、NakamichiのドラゴンとPioneerのT-770Sが置いてありました。ドラゴンは15万円以上の値札がついていたので却下、そして25,000円の札が付いていたT-770Sにターゲットを絞ったんです。

T-770Sを確保する為に交渉した時のことです。店員がいいました。
「T-1100Sも入ってます、今入ってきたばかりで陳列前のものですが……」

即決で買いに行きました。
こうやってT-1100Sを手に入れたのです。値段は税込み36,750円でした (ジャンクではありません)。

T-1100Sのココがいい
1, デザインが非常にシンプルで分かりやすく、かつ重厚さが伺える。
2, 重量が8.5kgと結構重く安定感がある。
3, メタルテープを使った時の周波数特性が30kHzまである。
4, 背面端子が金メッキされている。

2, カセットテープに録音する、という魅力

カセットデッキ愛好家は今更言われなくても理解している事ですが、昔は、カセットデッキのレベルメーターは針でした。文字通り針がレベルに連動して動くんです。子供の頃はこれを見るのが楽しかったことを覚えています。特に右(+側)に沢山振れると楽しかったですね。
そんな子供時代を送ったせいか、レベルメーターが電光に変わってからもレベルメーターがなるべく高いレベルまで振られるように録音する癖が付いていました。
RS-TR555が元気に動いていた頃は、好きな曲は高レベルで録音する事が厳しいSC-D5のカセットデッキではなく、TR-555で録音していました。高レベルが目的だったので、テープも高レベル録音に耐えられるテープに変わって行き、最初はノーマルだったのが、ハイポジ、メタル、と変わって行き、ハイポジではUX Master、メタルではMA-XGやMetal Masterにまで手を出していきました。それでも、RS-TR555で目一杯の+8を出すのは厳しく、音が割れてしまいました。まあ、今にして思えば、RS-TR555はドルビーHX-PROが自動で掛かるデッキだったので音が割れたって感じですね。

T-1100Sでは、BIASを浅くしたり深くしたり出来るので、RS-TR555と違いかなり追い込むことが出来ます。実際、え?このテープで+8クリア?なんていうのも出てきます。実際、RS-TR555で音が歪んだものを録音しなおすと、録音レベルが上がったにもかかわらずシャープで綺麗に録音できます。もうそれが楽しいんです。上手く決まった時の喜びって言うか(^^)

※ 録音(再生)レベルはそれぞれのメーカーが独自に設定したものなので、RS-TR555での+8とT-1100Sでの+8は同じレベルではありません。ただ、ドルビーマーク(ダブルDマーク)は企画が決まっていて、
ドルビーマーク=200nWb/m
となっています。松下系では+2や+3にドルビーマークが付いていて、T-1100Sでは-1の所についています。よって、
T-1100Sでの-1=RS-TR555の+2(または+3)
となります。つまり、T-1100Sで+8で録音したものを、松下系デッキで再生すると振り切る事になります。

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